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2016-11-11

大人も泣ける絵本~『きつねのおきゃくさま』


大人も泣いて、癒される『きつねのおきゃくさま』

   あまんきみこ・文 二俣英五郎・絵(サンリード出版)

人は元々、善なのか悪なのか・・・

哀しいかな人は、歳を重ねるにつれ、

性善説を信じたくても、信じられなくなる出来事に、

たくさん遭遇してしまいます。

そんな大人だからこそ、

善き者の描かれる絵本の世界に癒されるのでしょう。

 

『きつねのおきゃくさま』に登場するきつねは、

「きつね」というキャラクターの常道らしく、

ひよこをだまして食べようとする「悪者」として登場します。

ところが、きつねを全く疑うことなく信用するあひるの、

「きつねのおにいちゃんって、やさしいねえ」という一言は、

きつねの中の「善き者」を目覚めさせます。

ひよことあひるの「しんせつな おにいちゃん」

ひよことあひるとうさぎの「かみさまみたいな おにいちゃん」

信頼、感謝、賞賛をふくむ魔法の言葉が、

きつねを確実に変えていきます。

 

本物の悪役おおかみが登場した時、

きつねは、ひよこたちを守るために立ち向かいます。

きつねは、もはや悪者ではなく、

本当に「かみさまみいな おにいちゃん」となり、

その命を尽くして、おおかみを追い払います。

 

きつねの最期の場面、

『きつねは、はずかしそうに わらって しんだ』

とあります。

そこに描かれたきつねの穏やかな表情は、

もはや「ずる賢いきつね」ではなく、

紛れもなく「かみさまみたいな おにいちゃん」です。

 

「悪いきつね」としてひよこを「食べてやろう」と目論見ながらも、

ひよこの言葉に、いとも簡単に舞い上がってしまう

初めから少しとぼけたキャラクターのきつね。

そんなきつねに親しみを感じながら読み進めた読者は、

この最期の場面にきた時、

「きつね」がここまで善き者となり

命を懸けてひよこたちを守ったことに感動し、

その「きつねの おにいちゃん」が、

命を落としたことに胸を熱くします。

 

その表情が、とても穏やかだったこと、

そして、「はずかしそうに わらって」という言葉から、

「悪」だったはずの自分が「善」にかわった事への

きつねの気恥ずかしさが伝わってきて、

そんな素直なきつねが命を落としてしまった哀しみが

ますます胸を打つのです。

 

動物たちの 少しとぼけた表情と、

紙芝居のように縁取られた絵の世界に引き込まれ、

この絵本を読んでもらう子どもたちは、

ほとんどみな最期の場面で涙を流します。

子どもだけではなく大人も、きつねの姿に涙を流し、

心を癒される絵本です。

 

 

 

 

 

 


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