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2016-11-19

自分らしく生きる姿に癒される~絵本『はなのすきなうし』


自分らしく生きる~『はなのすきなうし』

      (おはなし マンロー・リーフ  え ロバート・ローソン

     やく 光吉夏弥    岩波の子どもの本)

自分らしく生きたいと願っても、

それを貫くのは、なかなか難しいことのようです。

「大衆迎合」を余儀なくされる事もあるでしょう。

「異端児扱い」となる事もあるでしょう。

「らしさ」を求められることもあるでしょう。

そんな現実に疲れた時、

きっと心を和ませてくれるのが

『はなのすきなうし』フェルジナンドです。

 

フェルジナンドは闘牛の本場スペインで生まれ育っているにもかかわらず、

花のにおいをかぎながら、静かに座っているのが好きな牛でした。

同じまき場の牛たちが 闘牛ではなばなしく闘うことを夢見て、

角で突っつきあったり 頭をぶつけあったりしている傍らで、

『いつも こるくの 木のしたに すわって、

しずかに、はなのにおいを かいでいるのでした。』

 

そんなフェルジナンドが、ハチに刺されるという、

小さなアクシデントによって 猛牛と勘違いされ、

闘牛場へと連れて行かれます。

他の牛にとっては憧れのその場所も、

フェルジナンドにはなんの関心もない所。

行きたい者をさし置いて、行きたくない者が選ばれる・・・

まさに運命の悪戯。

そもそも闘牛場は、牛が命を落とす場所です。

フェルジナンドは、この運命にどう立ち向かうのか・・・

 

そんな読者の心配をよそに、

フェルジナンドは闘牛場の真ん中で、

暢気な表情で座っています。

闘牛を見物にきた女性たちが 頭に飾っている

花のにおいをかいで すわっているのです。

 

広い闘牛場の真ん中に、ポツンと、フェルジナンド。

はるか遠くに描かれる客席は、満員の観客を表すたくさんの小さな黒い点。

闘牛場の入口には、おそるおそる覗いているらしい闘牛士の姿。

このページの挿絵のバランスが絶妙!

運命に動じないフェルジナンドの姿が、

まるでコントのように、その一枚の絵から伝わってきて、

思わず ふ・ふ・ふ と笑みがこぼれます。

 

ページをめくると、座り込むフェルジナンドの周りに、

泣いたり怒ったり諦めたりしている闘牛士の姿が描かれ、

「運命の悪戯」に翻弄されることなく

「自分らしさ」を貫くフェルジナンドのその姿に、

読者は 拍手喝采を送りたくなるのです。

 

自分らしく生きられず、気持ちが滅入ってしまった時、

フェルジナンドのこの姿は、

きっとその心を癒し、励ましてくれることでしょう。


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