雨の日の安らぎ
雨の日の安らぎ
子供の頃から、雨の日が好きでした。
商店をしていた実家の店先から、
雨を眺めるのが好きでした。
店の裏手には、ビールやお酒を運ぶ、空のケースが積まれていて、
積み重なって程よい高さになった場所を見繕い、
畳んだ段ボール箱で屋根を作り、小さいままごとの家を作りました。
子どもひとりがやっと入れほどの、その小さな家に入り、
そこから、雨を眺めるのが好きでした。
静かに降る雨の中、
自分の居場所が、雨から守られているという心地よさ。
小さな家から手をのばせば、すぐ雨に届くのに、
その小さな屋根の下で、
外の空気がそこにあるのに、
自分の世界がここにある嬉しさ。
雨音を聴きながら、
静かに過ごす時間の心地よさと安らぎは、
そんな子供の頃の、ささやかな楽しみから、
ずっと続いているようです。
守られていた幸せ
子供の頃は、
台風が近づいて来ると、何だかワクワクしていました。
風は生き物のようにゴーゴーと吹き、
雨は風に流されながら降り続き、
明日は学校が休みになるかもしれないと、
停電した部屋で、ろうそくの小さな火を眺めながら、
いつもとは違うそんな時間にすこし気持ちが昂って、
そんな気持ちを楽しんでいました。
家族を守る立場となった今、
台風は、日常の平穏を脅かす気象現象に他ならず、
無事に通り過ぎてくれるのを、待つだけのものになりました。
今になって、
守られていた安らぎと幸せに、気づくのです。
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